37回試験でも、事例問題は多く出題されると予測され、生活保護の分野でも1~2問は出題されると判断しています。過去問から出題の傾向を確認しておく必要があります。事例文を読んでいる時に、重要なキーワードに鉛筆で○を付けていくと頭に残り易いですし、また事例を一から読み直さなくても、視覚的に検索ができます。ここでは、黄色いマーカーでラインを入れ、要約しますので、参考にしてみてください。
①事例と設問の関係が浅い問題
【解説】
次の事例問題では、実際、事例を読まなくても解答できる選択肢が多く、事例の文章は最初にさっと読み切って、すぐに設問に取り掛かります。あまりじっくり事例を読んでいると時間が足りなくなるので、注意して下さい。さっと読んで設問にかかり、分からない事があったら、再度、事例文に戻って確認します。この様な事例問題では、確実に得点する、安易な事例問題にあたりますので、間違わない様にしましょう。
第36回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問2
事例を読んで、生活保護法の定める内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。〔事例〕
単身で2LDKの賃貸マンション暮らしのBさん(44歳)は、建設業に従事していたが半年前に自宅で骨折をして仕事を続けられなくなり、退職した。Bさんには遠く離れた故郷に父親(75歳)がいるが、父親も生活に余裕がない。Bさんは生活費が底をつき、生活保護を受給し、リハビリに励むこととなった。その後Bさんはリハビリが終わり、医師から軽労働なら就労できる状態だと診断された。求職活動をしたものの、年齢や技能の関係で仕事は見つかっていない。そこでBさんは今よりもう少し安い家賃のアパートに移ろうかと考えている。
【要約】➡単身44歳、自宅で骨折し退職した。故郷に父がいるが扶養できない。生活保護受給しリハビリ開始、就労できる状態に回復したが、現在求職中。易いアパートに引っ越し予定。
【選択肢】
1,就労に必要な技能修得の費用が生業扶助から支給される。
2,アパートに転居する際の敷金が生活扶助から支給される。
3,父親から仕送りを受けると、その金額の多寡にかかわらず保護は廃止される。
4,医師から就労できる状態だと診断された時点で、保護は廃止される。
5,父親は後期高齢者であるため、Bさんを扶養する義務はない。
【解答】
1,○ 就労に必要な技能習得の費用、例えば、介護職員初任者研修などの費用がそれにあたります。
2,✕ アパートに転居する敷金などは、住宅扶助から支給されます。
3,✕ 仕送りを受けた事自体が保護廃止の理由とはなりません。相当量の仕送りがあった場合は、その額を申告する必要があり、保護の継続が必要かどうかなどが判断されます。
4,✕ 就労が出来る状態である事だけを判断されて、保護を廃止する事はありません。
5,✕ 父親は後期高齢者であっても法定上の扶養義務者にあたり、相当量の収入がある場合は扶養義務を求められます。
第34回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問64
事例を読んで、Q市福祉事務所のH生活保護現業員(社会福祉士)がJさんに対して行う説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(41歳)は、近所のスーパーマーケットで働きながらアパートで高校生の長男と二人で暮らしていたが、2年前に病気によって仕事を辞めることになり、妹から仕送りを受けていた。しかし仕送りは約半年で途絶えてしまい、1年前から生活保護を受給することになった。通院を続けたことで、1か月前から病状が大分良くなり、現在は医師から就労できる状態であると診断され、アパートが手狭になったことから長男と共に転居することも考えている。
【解説】
上の問題と同じで、事例を読みこまなくても解答できる様な問題です。一般的な知識を問う問題なので、点取り問題、絶対間違えてはいけません。
【選択肢】
1,妹からの仕送りが再開した場合、世帯の収入として認定されることはない。
2,長男がアルバイトをした場合、世帯の収入として認定されることはない。
3,就労した場合、保護が廃止されずに就労自立給付金を毎月受給できる。
4,住宅扶助の基準額を超える家賃の住宅に転居する場合、生活困窮者住居確保給付金を毎月受給できる。
5,医師から就労可能であると診断されても、直ちに保護が廃止されるわけではない。
【解答】
1,✕ 仕送りなどの収入は報告する義務があり、世帯の収入として認定されます。
2,✕ 長男と同居しており、1と同じ理由で申告する必要があります。
3,✕ 就労自立支援金(専門-P138)とは、生活保護受給中に得た収入によって差し引かれた保護費を積み立てて、保護から抜け出したときに一括で受け取れるというものです。被保護者が就労した場合は、保護が廃止された上で就労自立給付金が給付されます。
4,✕ 生活困窮者住居確保給付金とは、失業や離職などにより経済的に困窮し、住居を失った、または失うおそれのある方に家賃相当額を支給するものです。住宅扶助の基準額を上回る住居には住む事ができませんし、上記、給付金は受ける事ができません。
5,○
第32回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問68
事例を読んで、福祉事務所の生活保護現業員による保護申請時に行う説明に関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(70歳、女性)は、年金と息子からの仕送りで一人暮らしをしていた。息子が交通事故で仕事を失い、収入がなくなって仕送りができなくなり、年金だけでは暮らせないため、生活保護を申請した。
【選択肢】
1,働くことが可能との医師の判断がある場合には、生活保護を受給できないと説明する。
2,Jさんに娘がいる場合には、娘からの扶養を受けることが生活保護を受給するための要件となることを説明する。
3,自宅が持ち家の場合、処分した後に生活保護を受給できると説明する。
4,収入に変更があった場合は、申告する義務があることを説明する。
5,保護申請は、福祉事務所指定の申請書でなければ受け付けられないことを説明する。
【解説】
1,✕ 働く事が可能と医師が認めても、現在の状況が困窮していれば保護の対象となります。
2,✕ 娘は民法上の扶養義務者(三親等内)に当たりますが、娘に扶養義務相当の収入が無ければ、Jさんは、保護を受給できます。
3,✕ 持ち家を処分する事もありますが、処分しなと受給できない訳ではありません。
4,○ 仕送りやアルバイト、譲渡された資産など、臨時的な収入に関しても申告する義務があります。
5,✕ 申請書の提出が出来ない状態でも、保護を受給する事は可能。指定の書式等はありません。
第31回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問題66
事例を読んで、生活保護における扶養義務者との関わりについて、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Kさん(67歳)は、福祉事務所で生活保護の申請をした。Kさんには長年音信不通の息子(40歳)がいる。福祉事務所は息子の居住地を把握し、Kさんに対する扶養の可能性を検討している。
【選択肢】
1,息子が住民税非課税であっても、息子はKさんに仕送りをしなければならない。
2,Kさんは、息子と同居することを条件に生活保護を受給することができる。
3,福祉事務所は、息子の雇主に対して給与について報告を求めることができない。
4,感情的な対立があることを理由に息子が扶養を拒否した場合、Kさんは生活保護を受給することができない。
5,福祉事務所は、息子が仕送りを行った場合、その相当額を収入として認定する。
【解説】
1,✕ 息子に扶養義務の能力が無ければ、仕送りの義務もありません。
2,✕ 保護受給に対する同居の義務はありません。
3,✕ 可能です。資力調査(ミンーズテスト)は扶養義務者への給与など所得の調査を行う事ができます。
4,✕ 感情的な対立など、息子が扶養を拒否した場合でも、本人が困窮に陥っている場合は、保護を受給する権利が発生する。
5,◯ 仕送りやアルバイト収入、譲渡などにより所得が発生した場合は、その相当する金額を収入と捉え、また、受給者は申告の義務を負う。
②事例に設問のキーワードがある問題
【解説】
次の事例問題では、一度事例を読んだだけでは、スラスラと解答できる問題ではありません。この設問を解答する際は、一度、事例を読みながらキーワードにチェックをしておき、選択肢に必要な情報を、事例のキーワードに戻り確認しながら解答する、という作業が必要になります。この様な事例問題は、37回試験でも必ず出題されると思いますので、過去問題等の繰り返し学習が必要です。
第34回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問67
事例を読んで、R市福祉事務所のK生活保護現業員(社会福祉士)の支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(60歳)は単身で生活しており、親族とは20年以上音信不通である。Lさんは、退職金規程のない会社で働いていたが、5年ほど前から持病が悪化して仕事ができなくなり、3年前に会社を退職した。それ以降は無職となっている。退職後、消費者金融から借金をして生活しており、家賃や公共料金も滞納しているようである。現在も直ちには就労が困難な健康状態であるため、Lさんは生活保護の受給を希望し、R市福祉事務所に生活保護を申請した。
(注)「無料低額診療事業」とは、社会福祉法第2条第3項第9号に規定する「生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業」のことである。
【要約】➡Lさん(60歳)単身、親族とは音信不通、就労が困難な健康状態、3年前に退職、無職。消費者金融から借金、家賃滞納、生活保護を申請。
【選択肢】
1,保護の要否判定を行うとともに、援助計画策定のために必要な情報収集を行う。
2,保護の申請に当たっての条件として、「無料低額診療事業」を利用するように指導する。
3,社会福祉協議会と連携して、日常生活自立支援事業の利用を促す。
4,福祉事務所からLさんの扶養義務者に連絡を取り、Lさんの借金の返済を要請する。
5,公共職業安定所(ハローワーク)で求職活動をするように指導する。
【解答】
1,○ 現業員の業務として、対象者が生活保護制度の受給要件を満たしているかどうか、を確認する為、資力調査(ミーンズ・テスト)により資力の確認を行います。また、保護以外の社会保障制度や扶養義務者の有無、利用可能な制度など、資産及び能力などの活用を模索します。
2,✕ 「無料低額診療事業」の説明があるが、Lさんは既に保護の申請を行っています。保護費の受給が決定すると医療費は扶助される為、今、必要な事業ではないです。
3,✕ 日常生活自立支援制度は、判断能力の低下により、金銭管理が困難な高齢者や障害者を対象としており、Lさんは金銭管理が出来ない訳では無いので利用できません。
4,✕ 親族とは音信不通であり、連絡を取るのは困難と考えられる。
5,✕ Lさんは、就労が困難な健康状態である為、まずは治療を優先する必要がある。
第32回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問66
事例を読んで、福祉事務所の生活保護現業員が行う業務として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Hさん(70歳、男性)は生活保護を受給し、アパートで一人暮らしをしている。糖尿病を患っており、主治医からの検診書によると働くことは困難な状況である。趣味がなく、友人との付き合いもなく、一日の大半をアパートでテレビを観て過ごしており、食生活も不規則である。親族としては遠方で暮らす妹のみであるが、Hさんは妹とは20年以上音信不通が続いており、所在を知らないと言っている。
【選択肢】
1,稼働能力の活用を図るため、公共職業安定所(ハローワーク)へ行って求職活動を行うよう、指導・指示を行う。
2,自立支援プログラムに参加するよう、指導・指示を行う。
3,生活保護受給者等就労自立促進事業を利用するため、公共職業安定所(ハローワーク)へ支援要請を行う。
4,面接相談を通して本人の意向を把握した上で、社会生活自立や日常生活自立に向けた支援の方法を検討する。
5,扶養義務者である妹に対して、回答期限を付して書面による扶養照会を行う。
【解説】
1,✕ 主治医からの検診書によると働くことは困難な状況とありますので、まずは健康管理が必要になります。
2,✕ 自立支援プログラムは、生活保護の被保護者に就労支援を中心として、自立を促進するプログラムですが、この場合は参加するよう指導・指示する前に、Hさん本人に参加の意思を確認する必要があります。
3,✕ 2に同じく、まずは本人の意思確認を行うべきである。
4,○
5,娘は民法上の扶養義務者(三親等内)に当たりますが、20年も音信不通な状態の娘に扶養義務を確認する事は困難です。
第33回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問題65
事例を読んで、R市福祉事務所のK生活保護現業員が保護申請時に行う説明に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん( 39歳、男性)は、妻( 36歳)、長男( 15歳、中学生)及び次男( 4歳、幼稚園児)と暮らしている。Lさんは精神障害者、妻は身体障害者であり、一家は夫妻の障害基礎年金とLさんの就労所得で生活してきた。これまでLさんはパートタイム就労を継続していたが、精神疾患が悪化して退職し、夫妻の年金だけでは生活できなくなった。Lさんは、退職に際して雇用保険からの給付もなかったので、生活保護の申請を行おうとしている。
【選択肢】
1,生業扶助における母子加算を受給できることを説明した。
2,二人の子に対しては、それぞれ教育扶助を受給できることを説明した。
3,長男が高校に進学すれば、教育扶助から高等学校等就学費を受給できることを説明した。
4,夫妻が共に障害基礎年金を受給していても、生活保護の申請を行うことはできると説明した。
5,Lさんに精神疾患があるとしても、就労が可能である場合、生活保護の申請は行えないことを説明した。
【解説】
1,✕ 母子加算は生業扶助でなく、生活扶助の一時金として支払われ、かつ、ひとり親世帯が対象ます。
2,✕ 教育扶助とは、義務教育の機関に支払われ扶助で、保育所や幼稚園の費用は支給されません。また、保育所は児童福祉法に規定する児童福祉施設であり、幼稚園は文科省における、教育施設です。
3,✕ 高等学校等就学費は生業扶助で受給できる。
4,○ 障害者基礎年金を受給していても、一定の生活水準より低ければ生活保護の申請が可能です。
5,✕ 就労が可能である事だけで保護の申請が却下される訳ではありません。
③知識や判断力を問う難易度の高い問題
【解説】
下の様な問題では、事例の内容から専門的な実務に関する回答者の知識や判断力を問い、最も適切な回答を選ぶという問題形式です。現場での経験と知識が必要になる問題で、今後もこの様な実務形式の事例問題が出題する事が予想されますので、過去問題にも積極的に取り組み慣れる事も必要です。また、専門的な知識がなくても回答を導き出せる選択肢もある為、明らかに誤りと判断できる選択肢を消去し、残りの選択肢からもっとも相応しい回答を選ぶという2段階の回答方法で対処して下さい。
第29回 低所得者に対する支援と生活保護制度 問題68
事例を読んで、生活保護制度における自立支援について、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Hさん(55歳)は、仕事中頻繁に飲酒していたことから解雇され、預貯金も底をついたので生活保護を受け始めたところ、アルコール依存症の診断を受けた。担当の生活保護ケースワーカーはHさんと話し合いの上、自立支援の計画を作成することになった。
【選択肢】
1,抗酒剤の服用により、飲酒の欲求を抑えることができると説明した。
2,求職活動の前に専門的な医療機関での治療を優先する計画を立てた。
3,飲酒しながら自立生活を営むことができるよう自立支援の計画を策定した。
4,生活習慣を見直す必要があるため、Hさんの意に反して更生施設へ入所させることにした。
5,一度作成した自立支援の計画は、変更できないと説明した。
【解説】
1,間違ってはいないが、即回答できない。
2,こちらも、間違っていない様子。
3,✕ これは明らかに間違い選択肢とわかりますね。飲酒しながらの生活では立ち直りはできません。
4,✕ こちらも間違いと判断できますね。生活習慣を変える必要はありますが、本人の意に反して、が間違い。本人が納得した上で、生活習慣の見直しができる様な計画が必要です。
5,✕ これも間違いの匂いがプンプンです。自立支援計画に限らず、ケアプランや個別支援計画などでも、一度作ったプランは定期的に見直しが必要です。
ここで、選択肢1と2,が残りました。この2つから最も適切な方を選びます。
1,✕ 福祉事務所の現業職員の立場で、抗酒剤の効果の可否は判断できない為、不適当な回答と判断します。
2,◯ アルコール依存症と診断された後、どの様な治療が必要かどうか、などは専門の医師との話し合いの中で検討する事なので、正しいと判断します。
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