生活保護の「原理」と「原則」
まずは、生活保護制度の根幹ともなる「4つの原理」と「4つの原則」について説明します。一般的な「原理」と「原則」の言葉の違いは、ややこしくなるので説明しませんが、覚えてほしい事としては、カリスマ先生のブログにもある「原理には例外がない」「原則には例外がある」という事です。
生活保護の4つの原理とは以下になります。
①国家責任、②無差別平等、③最低限度の生活、④保護の補足性
これらは、生活保護法の第1章1条から4条に規定されており「例外のない揺るがない事実」とされています。例えば「①国家責任」について、国家が責任を持たない例外はありません。また「②無差別平等」にも例外は考えにくいです。
ゴロ➡「国 内(無)最 速(足)」とか「国 際 保 護 無し」など。
一方、4つの原則については、
①申請保護、②基準及び程度、③必要即応、④世帯単位があり、例外の規定が認められております。例えば「①申請保護」については、路上で倒れている生活困窮者は申請が出来なくても保護の対象とされる場合があったり、「④世帯単位」についても、個人を対象に保護が認められるケースがあります。
これらの原則は生活保護法の第2章7条から10条にあります。
ゴロ➡「親 戚(き)必 要(よ)」とか「新 記事 必 要(よ)」など。
「原理」と「原則」における定義
4つの原理(揺るがない事実として生活保護法に規定)
①国家責任(最低限度の生活を保障と、自立を助長する)
日本国憲法25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
②無差別平等
すべての国民は、この法律の要件を満たす限り、無差別平等に保護を受けることができる。
③最低限度の生活
最低限度の生活とは、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
④保護の補足性
生活に困窮する者が所有する資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件とする。
4つの原則(例外の規定あり)
①申請保護の原則
保護の申請は、要保護者、または扶養義務者、その他の同居の親族の申請に基いて開始する。
但し、急迫した状況にある時は、保護の申請がなくても、必要な保護を受けることができる。
②基準及び程度の原則
厚生労働大臣の定める基準によって、要保護者の需要を基とし、金銭や物品で満たすことのできない不足分を補う程度とする。
また、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて事情を考慮し、最低限度の生活を満たすのに十分なもので、且つ、これをこえないものでなければならない。
③必要即応の原則
保護の実施は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等、その個人の相違を考慮して、有効的に行う。
④世帯単位の原則
原則は世帯単位として実施。但し、必要に応じて個人を単位として定めることができる。
国家責任の原理
① 国家責任の原理 最強本P-131
・日本国憲法第 25 条の生存権の理念に基づく
・国家責任は2本立て「最低限度の保障」と「自立の助長」
・「経済的(就労)自立」「日常生活(健康)の自立」「社会生活(社会の一員として)の自立」
【問題】
1,最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。
2,生活保護が目的とする自立とは、保護の廃止を意味する経済的自立のことである。
3,生活保護が目的とする自立とは、経済的自立のみを指している。
4,すべて国民は、この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り、この法律による保護を受けることができる。
5,日本国憲法第26条に規定する理念に基づく。
6,最低限度の生活を保障することを目的としている。
7,自立の見込みがあることを要件として、保護を受けることができる。
8,自立を助長することを目的としている。
9,この法律は、地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し、必要な保護を行い、その自立を助長することを目的としている。
10,生活保護は、日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
【解説】
1,○
2,✕ 経済的自立に加え「日常生活(健康)の自立」や「社会生活(社会の一員として)の自立」も定義されている。
3,✕
4,✕「地方公共団体の条例の定める要件」は特に規定されていない。
5,✕ 日本国憲法第 25 条の生存権の理念に基づく
6,○
7,✕ 自立の見込みがあるかどうかは問わない。
8,○
9,✕「地方公共団体が」ではなく、国が行う。
10,✕ 日本国憲法第 25 条の生存権の理念に基づく
無差別平等
② 無差別平等 最強本P-131
・困窮に陥った理由は問わない。
・国籍要件があり外国人は対象外になっている(実際は人道上保護している)。
・ただし、永住者や定住者、日本人の配偶者、難民認定者などは保護の対象となっている。
【問題】
1,すべて国民は、この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り、この法律による保護を受けることができる。
2,生活困窮に陥った年齢によって、保護するかしないかを定めている。
3,保護は、生活困窮に陥った原因に基づいて決定される。
4,生活に困窮していても借金がある場合は、保護を受けることができない。
5,自立の見込みがあることを要件として、保護を受けることができる。
【解説】
1,✕「地方公共団体の条例」では限定されない。
2,✕ 年齢要件などなし。
3,✕ 困窮の原因によらない。
4,✕ 生活に困窮し、借金があっても生活保護を受けることはできます。ただし、返済義務は消えません。また、生活保護費で借金を返済することも不正受給に該当します。
5,✕ 自立の見込みが無くても保護は受けられる。
最低限度の生活
③ 最低限度の生活
・日本国憲法第25条にはすべての国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されており、生活保護もそれと同様の生活内容が保障される。
・「健康で文化的な最低限度の生活」を保障。
・最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない。
・最低限度の生活とは、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定されている。
【問題】
1,この法律により保障される最低限度の生活は、国民一般の平均的な資産基準によって決定される。
2,保障される最低限度の生活とは、肉体的に生存を続けることが可能な程度のものである。
3,生活保護の基準は、最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえるものでなければならない。
4,最低限度の生活を保障することを目的としている。
【解説】
1,✕ 生活保護法において保障される最低限度の生活は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定されています。
2,✕ 「健康で文化的な最低限度の生活」と定義されています。
3,✕ 「これをこえないもの」でなければならない。
4,○ 最低限度の生活を保障することを目的としている。
保護の補足性の原理
④ 保護の補足性の原理
・生活保護は、資産や能力を最大限活用し、扶養義務者の援助を求め、それでも最低限度の生活を維持できない場合に受給できる(生活保護法第4条第一項)。
・さらに「他法・他施策優先の原理」が規定され、生活保護を受ける前に、児童扶養手当とか、特別児童扶養手当とか、自立支援医療とか、障害年金とか、生活保護以外の制度や施策を活用して、それでも最低限度の生活に満たない場合に生活保護が受給できる。
【問題】
1,補足性の原理により、素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。
2,他の法律に定める扶助は、生活保護法による保護に優先して行われる。
3,民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、生活保護に優先して行われる。
4,民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われる。
5,補足性の原理によって、扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
【解説】
1,✕「無差別平等」の原理により、素行不良などの欠格条項はなし。
2,○ 他法・他施策優先の原理
3,4,○
5,✕ 生活保護法には「扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」という補足性の原理があります。しかし扶養義務者が扶養できない場合は保護を受けることが可能です。
申請保護の原則
① 申請保護の原則
・要保護者や扶養義務者又は同居の親族の申請に基づいて保護が開始されますが、例外として、急迫時には申請がなくても保護される。
【問題】
1,保護を申請できるのは、要保護者及びその扶養義務者に限られている。
2,急迫の状況の場合でも、申請の手続きをとらなければ保護を行うことはできない。
3,生活保護の申請は、民生委員が行う。
4,保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。
5,急迫の状況の場合でも、申請の手続きをとらなければ保護を行うことはできない。
6,急迫した状況にある場合は、資産等の調査を待たずに保護を開始することができる。
7,能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持及び向上に努めなければ、保護を申請できない。
【解説】
1,✕「限られている」は間違い選択肢の常套句。答えは「同居の親族」でも可能。
2,✕ 例外として、急迫時には申請がなくても保護される。
3,✕「要保護者」「扶養義務者」「同居の親族」
4,✕「同居の」親族
5,✕ 2に同じ
6,✕ 保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならないと決められています。
7,✕ 「常に、能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り、その他生活の維持,向上に努めなければならない」という生活上の義務がありますが、どのような状態であっても申請はできます。
基準及び程度の原則
② 基準及び程度の原則
・扶助基準は5年ごとに検証され、それをもとに生活保護基準は(※)ほぼ毎年改定され、厚生労働大臣が定め、厚生労働省告示で公表する。
・基準は最低限度の生活水準を満たし、かつそれを越えないものとされる。
・要保護者の需要を基に、金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う。
・生活保護基準は「毎年」改定されますが、生活保護基準の1つである生活扶助基準は、5年毎に実施される全国消費実態調査の特別集計データなどを用いて、社会保障審議会の生活保護基準部会で「検証」が行われます。決定は全て「厚生労働大臣」が行う。
【問題】
1,保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行う。
2,保護の基準は、国会の審議を経て、法律で定めることとなっている。
3,保護基準は、社会保障審議会が定める。
4,生活保護の基準は、厚生労働省の社会保障審議会が定める。
5,保護基準は、社会保障審議会が定める。
6,保護の基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、これを超えないものでなければならない。
【解説】
1,○ あくまでも最低限度の生活に不足している分のみ給付される。
2,✕ 社会保障審議会を経て、厚生労働大臣が決定。
3,4,5,✕ 2に同じ
6,○ 生活保護法では「保護基準は要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これをこえないものでなければならない」という基準及び程度の原則があり、あくまで「こえない」ことが要件になっています
(※)
決定者 | 年数 | |
生活保護基準 | 厚生労働大臣 | 1年毎 |
診療報酬 | 中医協に諮問して厚生労働大臣 | 2年毎 |
介護報酬 | 社会保障審議会に諮問して厚生労働大臣 | 3年毎 |
必要即応の原則
③ 必要即応の原則 最強本P-133
・要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して有効かつ適切に行うものとする」とされてる。
【問題】
1,保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等に関して、世帯の実際の相違を考慮することなく一定の必要の基準に当てはめて行う。
2,必要即応の原則とは、要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。
【解説】
1,✕ 考慮して有効かつ適切に
2,○
世帯単位の原則
④ 世帯単位の原則
・生活保護は世帯単位が基本。ただし例外として、緊急の場合は個人単位で支給されることもあり。(例えば、虐待やDV・施設入所などで世帯分離が認められた場合など)
【問題】
1,保護は、親族を単位としてその要否を定める。
2,保護は、個人を単位として行われるが、特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。
3,保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。
【解説】
1,✕ 世帯を単位とする
2,✕ 逆
3,○
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