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精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)

受験に役立つ勉強

精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5」が、最近の出題頻度が高い事は、前回のまとめ「午前・最初の分野《攻略法》」で話しましたが、実際、どの様な対策が必要かと思い、下記にまとめてみました。

まず、この「DSM-5」ですが、精神障害の診断分類マニュアルみたいなもので、アメリカ精神医学会から出版された書籍になります。この書籍には精神疾患の分類について22の疾病に分けて記載されています。それを基に、精神科Drが診断の目安にする、というものです。

障害名とキーワード《まとめ》

DSM-5だけでもとても範囲が広いので、全てに目を通す事は、かなり時間と労力がかかる領域であるため、大まかな知識として、用語とキーワードのみ習得できる様に最初にまとめをおいてます。詳しくは以下、大項目のリンクなどから再度読み進めて学習して下さい。

1、神経発達症群/神経発達障害群
1)知的能力障害(知的障害) →軽度・中等度・重度・最重度の4つに分類
①知的能力(IQ)が70未満
②社会生活への適応能力が低い
③発達期(18歳以下)に生じる
2)コミュニケーション障害(4種)
①言語障害 →話す、書くといった言語の習得や使用に困難さを有する障害。
②会話音声障害(語音障害)→思いを上手く言葉にして話すことに困難さがある。
③吃音,小児期発症の流暢性障害 →多くは6歳までに発症、言葉のつまり、繰り返し。
④社会性コミュニケーション障害 →会話能力は十分あるが、コミュニケーションに問題が発症。
)自閉症スペクトラム障害(ASD)→スペクトラム=多様な表現型
①コミュニケーションの欠陥
②常同的で反復的な運動動作
③同一性へのこだわり
④融通の効かない執着
⑤症状は発達早期の段階で必ず出現する
4)注意欠如・多動性障害(ADHD)
①不注意 →落とし物や忘れ物が多い、気がそれる、集中し続けることの難しさ、忍耐力の弱さ
②多動性 →急に道路に飛び出す、不適切な場面で過剰に動きまわる
③衝動性 →授業中も落ち着きなし、座っていられず、席を立つ、不適切な行動
5)限局性学習障害(SLD)=学習障害
①学習の三要素(読む、書く、計算)に問題がある。
②就学前に顕在化しにくい
③学習意欲はある

2、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
)妄想性障害(旧パラノイア)妄想が中心症状で、それ以外の精神症状はなし
①被愛型 →相手から愛されている妄想。頻回に手紙やメール、家や職場に接触しようとする。
②誇大型 →自分はすごい才能や知識を持っている、重大な発見をした等の妄想が中心。
③嫉妬型 →明らかな証拠がないのに「浮気をしている」等と信じ込んで疑わない。
④被害型 →自分が被害を受けているという妄想が中心。
2)統合失調症 →中核症状は以下の5つ妄想と幻覚が中心段階を経て進行予後不安定)※100人に1人弱が罹患。
①妄想
②幻覚
③思考の解体・疎通性のない会話
まとまりのない言動・緊張病性の行動
陰性症状(感情の平板化・無為・無気力)

3、双極性障害および関連障害群(躁病エピソード)=いわゆる「躁うつ病」の事
1)「うつ病」とは異なり、躁状態の時と、うつ状態の時が交互に出現。
2)「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分かれ、症例としては「Ⅱ型」が多い。

躁の状態 →気分や考えの高揚・飛躍、過度の自信、楽観的で抑制できない感情、快楽の追求など
うつ状態 →気分の沈み、「楽しさ」の消失、意欲減退、集中力低下、いらいら、希死念慮など

4、抑(よく)うつ障害群
「抑うつ病」では、気分の落ち込み、活動への意欲の低下などにより、思考、行動、感情、幸福感に影響が出ている状況のことで、ほぼ毎日、2~3週間は前述の状態が継続する事で、治療の対象となる。また、希死念慮を伴う程の著名な状態の場合は「大うつ病」と呼ばれる。
「躁うつ病」との違いは、躁と、うつが交互に出現しない事。

5、不安症群/不安障害群
不安症は,過剰な恐怖心や不安が継続的に発生する状態で、不安を解消する為に取る行動により判断される疾患でもあります。例えば、母親や家族と離れる事に不安を抱く「分離不安症」や、「パニック発作」や「広場恐怖症」に代表される「パニック障害」、最も頻度の高い「極限性恐怖症」などがあり、極限性恐怖症の対象として、動物や高所、雷雨など要因は様々です。
全てに共通している症状としては、強い不安を継続的に感じ、日頃の生活に支障が出るという事です。

6、強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群
強迫性障害の症状としては繰り返して浮かんでくる「強迫観念」と、それを打ち消す為に行う「強迫行為」とが同時に呈する状態をいいます。
1)強迫観念 →意思と無関係な不快感や不安感を、強く感じられ、長く続く為に苦痛を感じる。
2)強迫行為 →不快な強迫観念を打ち消したり、振り払うための行為であり、やめられない。

7、心的外傷およびストレス因関連障害群
1)心的外傷後ストレス障害( PTSD )→生命を脅かされるような出来事(戦争、災害、犯罪、拷問・虐待等)や、トラウマ(心的外傷)、性的暴力などに曝(さら)される事ににより、苦痛な記憶がフラッシュバックするなどの悪化した精神状態が、一カ月以上継続する状態
①侵入→繰り返し起きる悪夢、フラッシュバックなど。
②回避→関連する刺激(記憶、場所、人など)から持続的に逃げる。
③認知と気分の陰性症状→トラウマ的出来事の想起不能、否定的な信念、持続的でゆがんだ認識。
④過覚醒→入眠困難、集中困難、易刺激性

2)急性ストレス障害(ASD)→上記と同じ心因的ストレスがあり、PTSDの症状を呈するものの、1ヶ月程度で消失する場合は急性ストレス障害に分類されます。
3)適応障害(AD)→本人と環境の間に大きなギャップがある事で、はっきりと確認できるストレス要因に反応し、3か月以内に発症、受け入れがたい事実が症状として出現する。

8、食行動障害および摂食障害 →DSM-Ⅳ(4)では正常体重の85%が瘦せ型の目安となっていたが、DSM-5では具体的な数値は示されず「性,年齢,発育や身体面からみて著しい低体重」となっており、下位分類でBMIによる重症度を特定する事となった。
1)神経性やせ症/神経性無食欲症
2)神経性過食症/神経性大食症
3)過食性障害 →自分ではコントロールできない過食(むちゃ食い)を繰り返すこと。しかし、過食によって体重が増加するのを防ぐための過度な運動や、嘔吐、下剤使用などの不適切な代償行動を伴わない点で神経性過食症とは区別される。

9、物質関連障害および嗜癖性障害群 
1)物質関連障害→アルコール、カフェイン、大麻、幻覚薬、吸入剤、オピオイド(鎮静薬)、睡眠薬、および抗不安薬(アンフェタミン型物質,コカイン,および他の精神刺激薬)、タバコなど、10種類の物質に対する依存的行動。
2)非物質関連障害群ギャンブル障害のみ。

10、神経認知障害群
1)せん妄 →注意の障害(注意の集中や維持の低下)と、意識の障害(環境認識の低下)がある
①短期間で出現し(通常数時間から数日)、日内変動がある
②認知の障害(記憶障害、見当識障害、知覚障害など)がある
③①と②の障害は認知症ではうまく説明されない
④身体疾患や物資中毒・離脱などでも引き起こされる事もある
2)認知症、および軽度認知障害
①アルツハイマー病による認知症
②前頭側頭型認知症
③レビー小体を伴う認知症
④血管性認知症
⑤外傷性脳損傷による認知症

ここからは、詳しい内容になるので、時間のある時に読んで下さい。

1、神経発達症群/神経発達障害群

この一群からは、過去10年間で2回出題されています。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)(第33回・問題6)
注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)(第36回・問題6)

その他では、下記2分類なども重要ですが、その他の分類も出題される可能もあります。
知的能力障害群(知的障害)
限局性学習症/限局性学習障害(SLD)

こちらは、日本小児神経学会の「神経発達症」の分類イメージです。

1-1)知的能力障害

DSM-5に分類される「知的能力障害」について、これより古いDSM-Ⅳ(4)では「精神遅滞」と分類されておりました。昨今の症例に合わせて改定されたと認識していますが、これが一つ、出題され易い Point になります。

上の図より「知的能力障害」については、その症状に合わせて軽度・中等度・重度・最重度と4つの分類があり、以下の3つの基準があることで社会生活を過ごすうえでの困難さを感じ、支援を必要としている状態のことをいいます。

知的能力(IQ)が70未満
日常生活や社会生活への適応能力が低い
発達期(18歳以下)に生じている

この基準も問題として出易いので、だいたいのイメージで覚えておきましょう。
数字の入れ替え問題は時々出題され、例えば「IQ=50未満」とかで出題される事があります。IQ=50ってかなり低いので、ゆっくり考えれば予測がつくのですが、実践の場である事と、他の選択肢が邪魔して選びきれない、などが考えられます。

1-2)コミュニケーション障害

コミュニケーション障害には、以下の下分類があります。

言語障害
 →話す、書くといった言語の習得や使用に困難さを有する障害。
会話音声障害(語音障害)
 →思っていることを上手く言葉にして話すことに困難さを有する障害。
・吃音,小児期発症の流暢性障害
・社会性(語用論的)コミュニケーション障害
・特定できないコミュニケーション障害

ここは、4つの下分類がある、程度の知識で良いと思います。

1-3)自閉症スペクトラム障害(ASD)

33回の試験に出ました。一般的な症状を問う問題。

【問題】次のうち、精神疾患の診断・統計マニュアル( DSM-5 )において、自閉スペクトラム症( ASD )と診断するための症状に含まれるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1,同一性への固執
2,精神運動制止
3,陰性症状
4,気分の高揚
5,幻覚
注意)ASD=自閉症スペクトラム障害、ASD=急性ストレス障害、どちらも略せばASDです。

【解説】
1,同一性への固執が強いのは、自閉スペクトラム障害の特徴です。
2,精神運動制止とは、抑うつ病の典型的な初期症状で、意欲の低下、思考動作の緩慢、口数が減る、声が小さくなるなどの症状です。
3,陰性症状は、統合失調症スぺクラム障害の症状で、感情の平板化、無為、無気力などが見られます。
4,気分の高揚は、双極性障害(躁うつ病)の特徴で、考えの飛躍や過度の自信、楽観的な言動、抑制できない感情、快楽の追求などの症状が見られる。
5,幻覚と言えば、統合失調症の代表的な症状です。
【解答】1,○

現状としては「ASD患者が高齢化している」などという問題も多くありますので、今後も形を変えれ出題されるかも知れません。日本自閉症協会のページはこちら。

分類的には、これまで「広汎性発達障害」の下位カテゴリの「自閉性障害」として分類されていましたが、DSM-5 では、非常に多様な表現型を包括する用語に改定され「スペクトラム」と言う用語が用いられています。一般的な判断基準は下記になります(大雑把な書き方です)。

・非常に多様な表現型がある
コミュニケーションの欠陥
・常同的で反復的な運動動作
同一性へのこだわり
・融通の効かない執着
・症状は発達早期の段階で必ず出現する

1-4)注意欠如・多動性障害(ADHD)

私が受験した、去年の36回に出題されました。その際は分類を問われる問題だった為、特有の症状などは問われませんでした。今後、症状などは問われる可能性がありますね。

【問題】次のうち、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM−5)において、発達障害に当たる「神経発達症群/神経発達障害群」に分類されるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1,神経性無食欲症
2,統合失調症
3,パニック障害
4,適応障害
5,注意欠如・多動症(ADHD)

【解説】
1,神経性無食欲症は、食行動障害および摂食障害群に分類されます。
2,統合失調症は、統合失調性スペクトラム障害群に分類されれます。
3,パニック障害は不安障害群に分類されます。
4,適応障害は、適応障害群に分類されます。
5,ADHDは神経発達障害群に分類されます。
【解】5,○

注意欠如・多動症(ADHD)以外の4つの別カテゴリにある症状についても、これらの症例の特徴などは覚えておく必要がありそうです。

実際の症状としては、3つの基本的な特性があります。

不注意・・・落とし物や忘れ物が多い
・課題から気がそれること、集中し続けることの難しさ、忍耐力の弱さ
多動性・・・急に道路に飛び出してしまう
・不適切な場面で過剰に動きまわること
衝動性・・・授業中に落ち着いていられず、座っていてももじもじしたり、席を立ったりしてしまう
・自分に害となる可能性が高い行動であっても、「しないほうがいい」と考えることなく即座にしてしまうこと

この3つの基本特性は覚えた方が良いです。

1-5)限局性学習障害(SLD)=学習障害

限局性学習障害(SLD)はこれまでに出題されていませんので押さえておきましょう。

限局性学習障害(SLD)は、通称「学習障害」と言われている症状で、就学前には顕在化しにくい発達
障害の一つでもある。全般的知能は定型発達の子どもと変わらず、本人の学習意欲も十分ある。にもかかわらず、「字の読み書き」 や 「計算」など、特定の学習領域で困難さがみられる状態を指し、そのことで、学業、日常生活あるいは職場などで著しい支障をきたす障害状態にある事を言います。

学習の三要素(読む、書く、計算)に問題がある状態として、下記のPointをおさえてましょう。

就学前に顕在化しにくい
学習意欲はある
・読み、書き、計算など特定の学習領域で困難さが見られる

2、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群

統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群からは、過去に統合失調症の問題が2回、出題されています。

・統合失調型パーソナリティ障害
妄想性障害(旧パラノイア)
・短期精神病性障害
・統合失調症様障害
統合失調症(第27回・問題6)(第30回・問題6)

2-1)妄想性障害(旧パラノイア)

妄想性障害とは、その名の通り、妄想を主とした症状で、それ以外の精神症状をほとんど認めない疾患です。特に、下記の様な5つのタイプが良く見受けられます。

1,被愛型
自分より上の立場の人間から愛されているという妄想です。その妄想に基づいて頻回に手紙やメールを送ったり、家や職場に押し掛けたりと、対象者と接触しようとすることもあり、これが問題となることもあります。
2,誇大型
自分はすごい才能や知識を持っているとか、自分は重大な発見をしたといった妄想が中心となります。双極性障害(躁うつ病)で認められる誇大妄想に似ていますが、妄想性障害では躁うつ病と異なりその他の症状(不眠・食欲低下・気分高揚・多弁など)はほとんど認めません。
3,嫉妬型
自分の配偶者(夫や妻)や恋人に対して、明らかな証拠がないのにも関わらず「間違いなく浮気をしている」と信じ込んで疑わず、いくら相手が身の潔白を証明しても納得しません。
4,被害型
自分が被害を受けているという妄想が中心になります。被害の受け方は様々ですが、ただ不満に感じているだけであれば大きな問題にはならないのですが、時に相手に暴力を振るったり、裁判をしようとしたりといった行動化が認められることもあります。

2-2)統合失調症

過去2回、統合失調症に関する問題が出題されました。問題が作り易いのか、具体的な症状が問われる問題ですね。DSM-5では、統合失調症の中核症状を以下の5つと定義しており、症状のイメージを捉えておきましょう。

1.妄想
2.幻覚
3.思考の解体・疎通性のない会話
4.非常にまとまりのない言動・緊張病性の行動
5.陰性症状(感情の平板化・無為・無気力)

一般的に知られている「妄想」や「幻覚」以外に、「思考の解体」や「まとまりのない言動」、「陰性症状」なども特徴になる事を覚えておきましょうなります。

過去問としては、下記が出題内容になります。

第27回 問題6
【問題】精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ(4版は古い)に基づく統合失調症の診断に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1,妄想や幻覚は、陰性症状である。
2,まとまりのない会話あるいは発語は、症状の一つである。
3,症状は、発症から2週間で消失する。
4,仕事、対人関係、自己管理などの面での機能が低下することはない。
5,原因として、乱用薬物の摂取がある。

【解説】
1,妄想や幻覚は陽性症状です。
2,まとまりのない会話、は統合失調症の主症状です。
3,慢性的な疾患の為、症状は継続しながら悪化していく。
4,低下する事は勿論あります。
5,薬物乱用に関しては、物質関連障害群に分類されます。
【解答】2,○

第30回 問題6
【問題】精神疾患の診断・統計マニュアル( DSM-5 )において、「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれているものはどれか。正しいものを1つ選びなさい。

1,まとまりのない発語
2,観念奔逸
3,強迫行為
4,抑うつ気分
5,不眠または過眠

若干選択肢が被ってるところもありますね。選択肢として、単語の理解も必要になりますが。
【解説】
1,前述の選択肢と被りますが、まとまりのない発語は統合失調症の症状です。
2,観念奔逸とは、アイデアなどが次々と浮かび、話の展開が早すぎで会話にならない、など、考えがとめどなく浮かぶ事で、会話が成立しない状態を言う。
3,強迫行為とは、強迫性障害のに見られる症状でです。
4,抑うつ気分とは、抑うつ障害群に見られる症状です。
5,不眠、過眠は抑うつ病の一つです。
【解答】1,○

統合失調症の5つの中核症状以外に、覚えておく事は下記になります。

1,いくつかの段階を経て進行する慢性疾患である事(予後が不安定)。
2,100人に1人弱が罹患。
3,「幻覚」と「妄想」が中心で他の中核症状を伴う。

3、双極性障害および関連障害群(躁病エピソード)

双極性障害については、第28回に出題されています。

28回 問題7
【問題】
精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM−5)の「躁病エピソード」に記載されている症状はどれか。正しいものを1つ選びなさい。

1,易怒的
2,睡眠過多
3,幻覚
4,疲労感
5,強迫行為

【解説】
1,易怒的と言えば、限局性障害の躁病の状態や、アルツハイマー型の認知症患者などに多く見られます。
2,これは、抑うつ病に見られる症状です。
3,幻覚と言えばは統合失調症です。
4,疲労感も抑うつなどの症状です。
5,強迫行為は強迫性障害の症状です。
【解答】1,○

双極性障害と言えば、いわゆる「躁うつ病」の事です。症状が躁状態のみの「躁病」や、うつ状態のみの「うつ病」とは異なり、躁状態の時と、うつ状態の時が交互に出現します。また、下記の様に「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分かれ、症例としては「Ⅱ型」が多く、主症状はうつ状態が見られます。

躁の状態
気分の高揚、考えの飛躍、過度の自信、楽観的な言動、抑制できない感情、快楽の追求など。
うつ状態
気分の沈み、「楽しさ」の消失、意欲の減退、集中力の低下、いらいら感、希死念慮など。睡眠障害、食欲の低下や亢進、それによる体重の変化なども見られたりします。

4、抑うつ障害群

DSM-5においては「躁うつ病(双極性障害)」と「抑うつ病」をカテゴリーで分けている事が特徴的です。これら二つの症状の違いは「躁状態とうつ状態が交互に現れるかどうか」にあります。

「抑うつ病」では、気分の落ち込み、活動への意欲の低下などにより、思考、行動、感情、幸福感に影響が出ている状況のことで、ほぼ毎日、2~3週間は前述の状態が継続する事で、治療の対象となる。また、希死念慮と伴う程の著名な状態の場合は「大うつ病」と呼ばれる。

5、強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群

過去の診断基準DSM-IV(4)においては不安障害に分類されていたが、2013年のDSM-5からは独立した疾患概念として「強迫症および関連症群」の一つに位置づけられました。著名な症状としては繰り返して浮かんでくる「強迫観念」と、それを打ち消す為に行う「強迫行為」とが同時に呈する状態をいいます。

・強迫症/強迫性障害

強迫観念
本人の意思と無関係に頭に浮かぶ、不快感や不安感を生じさせる観念が、一般的な人より、強く感じられたり、長く続くために強い苦痛を感じている状態、症状。

強迫行為
不快な存在である強迫観念を打ち消したり、振り払うために行う行為で、強迫観念の様に不合理な行為であるが、それをやめると更に不安や不快感が増すため、止めることができない行為。

6、心的外傷およびストレス因関連障害群

このカテゴリーでは、普段からよく耳にする「PTSD」や「ASD」、「AD」など、心因性症状を伴う下記のサブカテゴリーがありますが、社会問題として度々取り上げられる事もあり、出題される傾向も高くなってきています。

・反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害(RAD)
・脱抑制型対人交流障害
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
急性ストレス障害(ASD)
適応障害(AD)

過去に一度、出題されています。

33回 問題12
【問題】
心的外傷後ストレス障害( PTSD )に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1,心的外傷後ストレス障害( PTSD )は、自然災害によっても引き起こされる。
2,フラッシュバックとは、心的外傷体験に関する出来事を昇華することである。
3,心的外傷後ストレス障害( PTSD )は、心的外傷体験後1か月程度で自然に回復することもある。
4,過覚醒とは、心的外傷体験に関する刺激を持続的に避けようとすることである。
5,回避症状とは、心的外傷体験の後、過剰な驚愕(きょうがく)反応を示すことである。

【解説】
1,PTSD(心的外傷)は、生命を脅かされる様な出来事や、心的外傷(=トラウマ)、自然災害などの恐怖にさらされる事による精神の病気です。
2,フラッシュバックとは、心的外傷などを受けた際の記憶が、再び脳裏に浮かび上がり、再度、同じ様な恐怖を起こし、症状が発症する事をいいます。
3,心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、少なくとも1ヶ月程度は症状が持続する事に対し、1ヶ月程度で、自然に記憶から忘れ去られる症状は、急性ストレス障害(ASD)と呼ばれます。
4,過覚醒とは、不眠などから生じる陽性反応で、躁うつ病などの症状です。
5,驚愕反応とは、僅かな刺激でも心が揺れる症状を言い、回避症状とは、辛い過去の体験により、人や場所、行動などを避けてしまう事を言う。
【解答】1,○

6-1)心的外傷後ストレス障害( PTSD )

生命を脅かされるような出来事(戦争、災害、犯罪、拷問・虐待等)や、トラウマ(心的外傷)、性的暴力などに曝(さら)される事ににより、苦痛な記憶がフラッシュバックするなどの悪化した精神状態が、一カ月以上継続する状態の事。

発症要因:トラウマ(心的外傷)的出来事を目撃する、または直接体験する。更には、繰り返し強制的にみさせられる。
症状:一か月以上、下記症状が継続する。
①侵入・・・繰り返し起きる悪夢、フラッシュバック。
②回避・・・関連する刺激(記憶、場所、人など)から持続的に逃げる。
③認知と気分の陰性症状・・・トラウマ的出来事の想起不能、否定的な信念や予想、持続的でゆがんだ他者への認識。
④過覚醒・・・入眠困難、集中困難、易刺激性

6-2)急性ストレス障害(ASD)

上記、同じ心因的ストレスがあり、PTSDの症状を呈するものの、1ヶ月程度で消失する場合は急性ストレス障害に分類されます。

6-3)適応障害(AD)

本人と環境の間に大きなギャップがある事で、はっきりと確認できるストレス要因に反応し、3か月以内に情動面や行動において、その受け入れがたい事実が症状として出現し、日常生活に支障をきたすもの。

7、食行動障害および摂食障害

旧・DSM-Ⅳ(4)では正常体重の85%が瘦せ型の目安となっていたが、DSM-5では具体的な数値は示されず「性,年齢,発育や身体面からみて著しい低体重」となっており、下位分類でBMIによる重症度を特定する事となった。また、DSM-Ⅳでは「幼児期または小児早期の栄養摂取および摂食障害」と「摂食障害」にわかれていたが、今回「食行動障害および摂食障害群」という新たなカテゴリーと、下記のサブカテゴリーに分類・統合されました。

神経性やせ症/神経性無食欲(第31回・問題7)
神経性過食症/神経性大食症
過食性障害

31回 問題7
問題
精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM−5)における「神経性やせ症/神経性無食欲症」の診断基準に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1,はっきりと確認できるストレス因がある。
2,体重は標準体重以上である。
3,対人恐怖がある。
4,やせることに対する恐怖がある。
5,過食を生じるタイプもある。

【解説】
1,神経性やせ症では、はっきりしたストレス因などはなく、体重などの増減に過剰に反応してしまい、行動する事を言います。
2,DSM-Ⅳ(旧)では、平均体重の85%以下が一般的な基準としていましたが、DSM-5からは「性,年齢,発育や身体面からみて著しい低体重」とされました。基本的に標準体重より軽い事が多いです。
3,対人恐怖はありません。PTSDとか、ASDとかの症状です。
4,やせる事に恐怖はないです。むしろ、やせたいと希望している。
5,やせたいという願望から食事のバランスが崩れ、過度なストレス状態になり過食に走る場合も、しばしば見られます。
【解答】5,○

過食性障害とは、自分ではコントロールできない過食(むちゃ食い)を繰り返すことが特徴です。しかし、過食によって体重が増加するのを防ぐための過度な運動や、嘔吐、下剤使用などの不適切な代償行動を伴わない点で神経性過食症とは区別されます。

8、物質関連障害および嗜癖性障害群

物質関連障害群は、アルコールや、カフェイン、大麻、幻覚薬、吸入剤、オピオイド(鎮静薬)、睡眠薬、および抗不安薬(アンフェタミン型物質,コカイン,および他の精神刺激薬)、タバコなど、10種類の物質に分かれている。

それに対して、非物質関連障害群については、ギャンブル障害のみである。


物質関連障害群
 1)アルコール関連障害群
 2)カフェイン関連障害群
 3)大麻関連障害群
 4)幻覚薬関連障害群
 5)吸入剤関連障害群
 6)オピオイド関連障害群
 7)鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬関連障害群
 8)精神刺激薬関連障害群
 9)タバコ関連障害群
・非物質関連障害群
 1)ギャンブル障害(第34回・問題6)

(第34回・問題6)
【問題】
次のうち、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において、物質関連障害及び嗜癖性(しへきせい)障害群に分類されるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1,限局性学習症(限局性学習障害)
2,ギャンブル障害
3,神経性やせ症(神経性無食欲症)
4,強迫症(強迫性障害)
5,急性ストレス障害

【解説】
1,限局性学習障害(SLD)は、一般的に言う「学習障害」の事で、嗜癖や薬物に関連するものではない。
2,ギャンブルは依存症として認められています。物質関連障害及び嗜癖性障害群に分類され、サブカテゴリーの非物質関連障害群に含まれます。非物質関連障害については、ギャンブル障害のみである。

9、神経認知障害群

分類上は下記の二つの分類に分けられるが、認知症等においては別分野と重なる為、省略する。

せん妄
・認知症(DSM—5)および軽度認知障害(DSM—5)

精神疾患の分類(22カテゴリー)

実際のDSM-5の中身ですが、日本精神神経学会が日本語訳した「DSM-5」がアップロードされていますので、今のところ分類については、22カテゴリーに分けられ、こちらが一番正確かと思いますが、非常に理解し辛い書き方になってます。黄色の線は過去の主題、大項目のリンクは関連ページ。

1、神経発達症群/神経発達障害群
・知的能力障害群(知的障害)
・コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)(第33回・問題6)
注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)(第36回・問題6)
・限局性学習症/限局性学習障害(SLD)
・運動症群/運動障害群
・チック症群/チック障害群(発達性協調運動障害、チックなど)
・他の神経発達症群/他の神経発達障害群

2、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
・統合失調型パーソナリティ障害
・妄想性障害(旧パラノイア)
・短期精神病性障害
・統合失調症様障害
統合失調症(第27回・問題6)(第30回・問題6)

3、双極性障害および関連障害群躁病エピソード 第28回・問題7
・双極Ⅰ型障害
・双極Ⅱ型障害
・気分循環性障害

4、抑うつ障害群
・重篤気分調節症
・かんしゃく発作
・うつ病(DSM‒5)/大うつ病性障害
・持続性抑うつ障害(気分変調症)
・月経前不快気分障害

5、不安症群/不安障害群
・分離不安症
・パニック症/パニック障害
・広場恐怖症
・社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)
・極限性恐怖症
・全般不安症/全般性不安障害

6、強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群
・強迫症/強迫性障害
・醜形恐怖症/身体醜形障害
・抜毛症

7、心的外傷およびストレス因関連障害群
・反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
・脱抑制型対人交流障害
・心的外傷後ストレス障害
・急性ストレス障害
・適応障害

8、解離症群/解離性障害群
・解離性同一症/解離性同一性障害
・離人感・現実感消失症/離人感・現実感消障害

9、身体症状症および関連症群
・身体症状症
・変換症/転換性障害(機能性神経症状症)
・病気不安症
・作為症/虚偽性障害

10、食行動障害および摂食障害群
神経性やせ症/神経性無食欲症(第31回・問題7)
・神経性過食症/神経性大食症
・過食性障害

11、排泄症群
・遺尿症
・遺糞症

12、睡眠/覚醒障害群
・不眠障害
・過眠障害
・呼吸関連睡眠障害群
・概日リズム睡眠‒覚醒障害群
・睡眠時随伴症群

13、性機能不全群
・射精遅延
・勃起障害
・女性オルガズム障害
・女性の性的関心・興奮障害
・性器‒骨盤痛・挿入障害
・男性の性欲低下障害
・早漏
・物質・医薬品誘発性性機能不全

14、性別違和
・小児の性別違和
・青年および成人の性別違和

15、秩序破壊的・衝動制御・素行症群
・反抗挑発症/反抗挑戦性障害
・間欠爆発症/間欠性爆発性障害
・素行症/素行障害
・放火症
・窃盗症

16、物質関連障害および嗜癖性障害群
・物質関連障害群
 1)アルコール関連障害群
 2)カフェイン関連障害群
 3)大麻関連障害群
 4)幻覚薬関連障害群
 5)吸入剤関連障害群
 6)オピオイド関連障害群
 7)鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬関連障害群
 8)精神刺激薬関連障害群
 9)タバコ関連障害群
・非物質関連障害群
 1)ギャンブル障害(第34回・問題6)

17、神経認知障害群
・せん妄
・認知症(DSM—5)および軽度認知障害(DSM—5)
 1)アルツハイマー病による認知症
 2)前頭側頭型認知症(DSM‒5)または前頭側頭型軽度認知障害(DSM‒5)
 3)レビー小体を伴う認知症(DSM‒5)(レビー小体型認知症(DSM‒5))またはレビー小体を伴う軽度認知障害(DSM‒5)
 4)血管性認知症(DSM‒5)または血管性軽度認知障害(DSM‒5)
 5)外傷性脳損傷による認知症(DSM‒5)または外傷性脳損傷による軽度認知障害(DSM‒5)

18、パーソナリティ障害群
・猜疑性パーソナリティ障害/妄想性パーソナリティ障害
・シゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ障害
・統合失調型パーソナリティ障害
・反社会性パーソナリティ障害
・境界性パーソナリティ障害
・演技性パーソナリティ障害
・自己愛性パーソナリティ障害
・回避性パーソナリティ障害
・依存性パーソナリティ障害
・強迫性パーソナリティ障害

19、パラフィリア障害群
・窃視障害
・露出障害
・窃触障害
・性的マゾヒズム障害
・性的サディズム障害
・小児性愛障害
・フェティシズム障害
・異性装障害

20、他の精神疾患軍

21、医薬品誘発性運動症群および他の医薬品の有害作用

22、臨床的関与の対象となることのある他の状態

コメント

  1. LOST より:

    問題に対する答えを書かないのはなぜなのでしょうか??
    こういう問題がでたよっていう紹介ですか?

    • かつみ かつみ より:

      ご質問ありがとうございます。
      問題には、リンクを貼ってますので、そこで確認して下さい。私が説明するより適切な説明が何件か出てますので。m(_ _)m

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