社会福祉士の役割を考える
まずは、自身がこの年齢に際して、生涯研修制度のスタートラインに立った事に新進気鋭の気概を感じており、これから始まる社会福祉士としての活動に心が躍る気持ちを持っている。これまでの職務上では、困難を抱える対象者に対し、直接的な支援を中心に行ってきたが、今後はマクロな視点に立つ事で新たな責任の所在が明らかになるだろうと思う。また、これまではスーパーバイジーの立場で活動する事が多かったが、今後はスーパーバイザーとしての役割も必要になってくると思われる。そう考えると、本当に身の引き締まる思いで現在の研修過程を進めている。
自身がこれから社会福祉士として自己研鑽するに当たっては、社会福祉士の倫理綱領・行動規範を熟知し、これに乗っ取った援助や活動を行う事が大切であると考える。また、社会福祉士として援助を展開するに当たり、個人的な対象者への活動にならない様、同じソーシャルワーカーと日々コミュニケーションをとり、互いに自己研鑽し合いながら、倫理綱領と行動規範にそって活動する必要があり、あくまでもその第一歩に着手したところである事も冷静に理解し、これから多くのソーシャルワークの実践経験を重ねて学びを進めて行きたいと思う。
これからの具体的な自己研鑽の為の研修計画を立案するには、まずはこの基礎研修Ⅰを終了し、ソーシャルワーカーとしての基礎的事項を十分に理解した上で、生涯研修制度を活用して社会福祉士としての資質の向上を図りたいと思う。具体的には、社会福祉士としての専門性が何であるか、また社会福祉士としての倫理綱領と行動規範をしっかり身に付けたい。次に基礎研修Ⅱにおいて、自立支援や意思決定支援など、実際の事例に触れ、実践の為のアプローチの手法を学びたいと思う。更に利用者を取り巻く社会資源の活用や、ソーシャルキャピタルなどにも着目し、ソーシャルワークの実際の展開過程を学びたい。これらの基礎的アプローチの方法を理解する事で、この後のスーパービジョンの展開や、相談支援従事者やケアマネージャーなどの支援者に対し後方支援を行える様になりたいと思う。昨今の障害者や高齢者を取り巻く権利擁護制度などの理解も含め、成年後見制度などの権利擁護事業や、複雑な社会的課題を抱える対象者へも果敢に支援の手が伸ばせる様な社会福祉士でありたいと思う。基礎研修Ⅲでは、社会福祉についてマクロ的な視野をもち、地域課題の提案や解決策、また福祉サービスの開拓など、自らが社会資源の一員と捉え知識と経験を重ねる事で、困難を抱える対象者の支援ができる様に努力したいと思う。そして基礎研修期間の3年間を利用して、自らの社会福祉士としての資質の向上を図り、これまでの人生で培って来た知識や経験を活用し、対象者や家族のみではなく、支援者や法人、一般企業などにおいてソーシャルワーカーのグローバル定義を展開したいと思います。
社会福祉士としての専門性について考える
私がソーシャルワーカーとして一番に大切にしたい事は、人間の尊厳や人権の擁護、更にはクライエントの権利侵害の廃止である。これは、これまで実際にクライエントに関わる中で感じて来た事に起因するが、様々な場面で権利の侵害が起こり得る環境が見られる為である。例えば高齢者介護の現場では、人員不足が慢性化し十分な教育を受けずに介護者の一人として働く支援者において、対象者への理解不足から発生するスピーチロックや、障害者支援における活動や参加の抑制、または意思決定支援についての対応の不十分さを日々感じる事がある為である。また、こういった社会的弱者に対する権利擁護は、倫理綱領の社会正義にも関係する事で、差別や貧困、抑圧や排除などが起こる環境をたえず見守って行きたいと思う。その中で、私が着手したい支援として、支援者に対する専門的な後方支援が上げられる。これは複雑多様化する社会環境の中でクライエントを支援する全ての支援者に対し、バーンアウトする事なく、継続して支援が提供される様、社会福祉士の専門性を発揮して、アドバイスや直接的なOJTを実施したいと思う。
二つ目は、多様性の尊重として社会的孤立を解消し、誰もが社会参加や社会活動が自由に行える社会を目指す事で、LGBTQや障害による偏見や差別、合理的配慮においても、人々が認め合い、助け合いながら、ソーシャルインクルージョンが推進される様、様々な活動を通して、啓発して行きたいと思う。その為には、自分自身を自己管理する能力を養い、複雑な課題を抱える対象者の支援などに関わった場合であっても適切な支援が提供できる様、日々研鑽する必要があると考えられ、私が社会福祉士として日々研鑽している姿が社会全体に認められる様、努力を惜しまない姿勢が大切である。
その他、青少年を取り巻く環境の改善や安全の確保、あらゆる状況で起こる権利の侵害やハラスメントに対しても、果敢に立ち向かい差別的な行動の抑制と虐待の廃止と防止に努め、また認知症高齢者を取り巻く環境においては、どの様な症状であっても人間らしい生活や関わりが持てる様、周辺環境の整備とそれを取り巻く環境すべてにおいて、適切な理解が浸透する様、意識の改善や学びの場を提供し、共に支え合いながら生活できる社会を目指したいと思う。
最後に、自分自身の大きな目標として、質の高いソ―シャルワーカーを輩出する事を上げる。これは、日々の業務や活動において、ソーシャルワーカーへの教育や学習機会の確保といった支援活動に力を入れ、社会全体がその資質の向上を目指して活発に協議できる社会を目指したい。これはクライエントの最大の利益と権利を擁護し、また我々ソーシャルワーカーの専門職としての存在を明確化するものであり、ソーシャルワークのグローバル定義の展開に繋がる活動と言える。
基礎研修Ⅰ ソーシャルワーク理論系科目Ⅰ視聴前講座
Q1 「社会福祉士及び介護福祉士法」で規定されている社会福祉士の定義について述べよ。
1978年に成立した「社会福祉士及び介護福祉士法」は、当時、増大する介護需要に対応する為、老人、身体障害者に関する福祉に対する相談や介護を依頼する事ができる専門的能力を有する人材が求められ成立しました。また、2007年には大幅な改正が行われ、専門職としての倫理や行動規範が明示されました。この法律において、社会福祉士及び介護福祉士法の定義が規定されており、第二条には、「この法律において社会福祉士とは、第二十八条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者をいう。」とされている。
Q2 1915年「ソーシャルワーカーは専門職業か」を講演したのは誰か?
フレックスナー(Flexner.A.)は、1915年の全米慈善矯正会議において、専門職であるための6つの属性にてらせて「ソーシャルワークは専門職でない」と結論づけました。フレックスナーが提唱した6つの属性とは、①基礎となる科学的研究があること、②知は体系的で学習されうるものであること、③実用的であること、④教育的手段によって伝達可能な技術があること、⑤専門職団体・組織を作ること、⑥利他主義的であることであり、フレックスナーはこれらの属性を基に、当時のソーシャルワークはまだ専門職としての要件を満たしていないと結論づけました。この講演は、ソーシャルワークの専門職としての確立を議論する上で重要な転換点となり、その後のソーシャルワークの発展に大きな影響を与えました。
Q3 ソーシャルワーカーの専門職としての属性条件とは何ですか。アメリカと日本4名の提言内容について述べよ。
1915年、フレックスナーは専門職の属性条件として、6つの提言を論じました。①体系的な理論がある事、②個人的な責任を伴う知的な仕事である事、③実践的、実用的である事、④教育的な手段として、伝達可能である事、⑤専門職団体、組織がある事、⑥利他主義的である事などを上げ、ソーシャルワーカーは専門職でないと提言しました。その後、40年を経て、1957年にグリーンウッドは、ソーシャルワーカーは専門職であると論じ、フレックスナーの提言に加えて、①専門的権威がある事、②社会的承認、③専門職的副次文化があると改めました。その後、ミラーソンは専門職の6つの属性を上げ、ソーシャルワーカーが専門職であると認めました。 一方、2000年頃以降、日本国内でもソーシャルワーカーの活動が認められ、その前身者である秋山智久が、社会福祉専門職と6つの条件を提唱し、社会福祉専門職の専門性を論じています。
Q4 ソーシャルワーカーはどのような分野で活躍しているか?できるだけ多くの種類を上げよ。
職能団体としてソーシャルワーカーの専門性を活かし、社会福祉士に関する研究や学習会、研修などを通じて広く社会に啓発している。その他、スクールソーシャルワーカー、成年後見人、地域包括支援センター、ケアマネージャー、相談支援専門員、障害者支援施設の生活支援員、市社協、大学の学生支援センター、地方自治体の査察指導員、病院の医療ソーシャルワーカー、若年性認知症支援コーディネーター、地域包括支援センター、地域活動支援センター、市こども家庭センター、企業総務部門の相談支援担当、老健施設の支援相談員、市・子育て支援課、福祉事務所、ケアマネによる事例検討会、NPO法人の役員など。
Q5 何故、リッチモンドは「ケースワークの母」いわれたのでしょうか。その活動と業績について述べよ。
1877年、リッチモンドはアメリカのCOS職員として働いていました。1898年、ニューヨークでの6週間に及ぶ博愛事業に関する講演会の実施を提案し、ショーシャルワーカーの専門性を教育的立場であると論じ、ソーシャルワーク専門職の端緒となりました。1899年には「貧困者への友愛訪問」で、友愛訪問を貧困者の喜び、悲しみ、人生に対する考え方などを共感できるよう身近に知る事を提唱しました。1917年著書「社会診断」において、慈善組織協会(COS)における実践活動を理論化しました。1922年には、著書「ソーシャルワークとは何か」で、ソーシャルケースワークを「人間と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティを発達させる諸過程」と定義し、個人の問題を環境と結びつけて考える事が大切だと捉えた。
リッチモンドが「ソーシャルワークの母」と呼ばれる所以は、当時の産業社会における貧困者に対して、自らが体系的に行ってきた友愛訪問の活動において、単なる慰問的な活動ではなく、人と環境の整合性が崩れる事により起こり得るとし、貧困者の喜びや悲しみ、人生に対する考え方に共感し、身近な存在として捉える事が必要と強調し、「人間と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティを発達させる諸過程」としました。彼女の「人と環境の相互作用を捉え、寄り添いながら科学的根拠に基づいて支援する」という姿勢が、現在も長くソーシャルワークの基礎として、理論と実践が今も世界中のソーシャルワーカーに大きな示唆を与え続けている為である。
Q6 1967年「ケースワークは死んだ」と、論文に中で発表した背景にはどのようなソーシャルワーク批判があったのか述べよ。
1967年、パールマンは自身の著書において、「ケースワークは死んだ」と論じました。これは、1960年代のケースワークは社会問題への対策よりも、個人的な心理や感情に焦点を当て過ぎていた傾向に対する警告であり、ケースワーク再生の期待を込めた自己批判的なものでした。また、ケースワークが本来持つべき人々の生活や環境を改善する役割を再認識し、その重要性を強調し社会変革への貢献が必要である事を論じました。
Q7 ジェネラリストアプローチからエンパワーメントアプローチが登場してきた背景について調べよ。
ジェネラリスト・ソーシャルワークについては、1960年ごろ、エコシステム的な視点を引き継ぎ、ソーシャルワークの実践が統合され、洗練されたものであり、対象とする問題は、人と環境の相互作用の不調和によって生み出されるものである。これは、個人・組織・コミュニティーのニーズ、およびサービス提供と社会政策に関わると提言されており、システム理論がその源流となっている。またその頃、パールマン、ホリス、フィッシャーなどの研究者によって、様々なアプローチが提唱され、問題や生活課題に着目したり、問題そのものを克服する為のアプローチ、心理社会的な問題に着目したアプローチなどが提唱された。その後、この様な各アプローチは、モダニズムからポストモダンへの変革期において、それぞれのアプローチが課題中心アプローチへと統合されて行く事になる。この統合化の波と同時に、被支援者自らのエンパワメントやストレングスに着目した、新しいアプローチが派生し、ホワイト、エプストン、ラポポートやクリルなどがそれぞれのアプローチ方法を提唱されていった。その中で、最も被支援者自身の強い意志やエンパワメントに着目したのが、ソロモンによって提唱された、エンパワメントアプローチであり、被支援者の行動を理解しようとする際、ともすれば問題や弱さに目が向きがちなワーカーに対し、クライエント中心の支援行動を思い起こされる力がある。このクライエント自身の力を生かした支援に気づき、クライエント自らが主体的に問題を解決できる様な支援を行う事が大切であると提唱したのがエンパワメントアプローチであった。
Q8 バートレットが提言した「ソーシャルワークの共通基盤」について調べよ。
バートレットによれば、ソーシャルワークは、人間の生活へ対応する為に、人々の社会的機能、すなわち他者や社会との多様な関係における日々の生活全体の営みに焦点を当てる。そしてソーシャルワーク実践を構成する要素そして、①問題を抱える人やその問題に対する理解から、実際に支援を展開する際に必要となる幅広い「知識」の体系、②個人や集団、あるいは地域などに直接的・間接的に支援する「方法や字術」としての様々な介入の種類、③ソーシャルワークの実践を支え、人々に関わるときの支援者の態度の基本となる「価値」の体系、という三つ要素をソーシャルワークの共通基盤とした。
Q9 ソーシャルワーカーの機能の中で、代弁機能、アウトリーチ・保護機能、仲介機能、調停機能に共通するソーシャルワーカーの立ち位置について調べよ。
ソーシャルワーカーがクライエントに対する相談業務や情報提供、あるいは心理的なサポートなど、個人や家族への直接的な働きかけを中心とした支援を展開する時に遂行する機能について、これら4つの機能に共通した内容については、一言でいえば「権利擁護」の視点がその根底にある。一つ目の代弁機能については、自らの希望や要求を主張できず、権利侵害が懸念されるクライエントやその家族を弁護し、その主張を代弁する機能である。次に、アウトリーチによる実践については、生活困難状況であるにも関わらず、自ら支援を求めず、また専門職や地域住民等からの支援も拒む人もあり、ワーカーが積極的に出向く事で必要なサービスにつなげていく姿勢が必要である。次の仲介機能について、人々の生活状況の多様化とともに、クライエントのニーズも多様化・複雑化し、各種制度やサービスの種類も多岐にわたる。その為、クライエントのニーズに合ったサービスを結びつける為には、専門的な知識と介入が必要である。また調停機能については、家族や関係者間とで意見の違いがあったり、組織や集団内、あるいは地域住民相互のあいだに葛藤があるとき、そのことでクライエントが地域における問題解決の妨げになる場合がある。その様な時に、問題解決に向けた合意形成をはかる調停者として機能する必要がある。これらの4つの機能に共通するソーシャルワーカーの立ち位置としては、権利擁護の立場に立って、「権利侵害」が起らぬよう、また、軽視されない様に弁護する必要がある。ただし、権利擁護の立場から、利用者への支援や見解が過度な支援にならぬ様、ワーカー自身が冷静な心理状態の上で課題を見据え、相互の利益を鑑み、中立的な立場で課題に立ち向かう姿勢が大切で、決してワーカー自身の感情によって左右される事の無い様に十分理解する必要がある。
Q10 ソーシャルワークの展開過程の中で「契約」の位置づけについて、その重要性について調べよ。
ソーシャルワークの一般的な展開過程については、①インテーク、②情報収集と事前評価(アセスメント)、③契約、④支援目標の設定と支援計画の作成(プランニング)、⑤支援活動の実施(介入)、⑥点検と評価(再アセスメント)、⑦終結と追跡調査がある。この中で、③の契約については、クライエントが抱える困難状況の改善や解決に向けて、ワーカーとクライエントが協働して取り組んでゆく為に結ばれる。社会福祉法において、第75条~第77条に規定されている内容について言及すると、クライエントのサービス利用についての意思の確認や、サービス内容や費用について、本人や家族に十分な説明を行い、特に利用契約時においては、サービスの内容、手続きのや方法など、重要な事項について記された書面の交付をサービス提供者に義務付けている。契約とは、サービス利用者や家族が納得した上でサービスが提供される様、とても重要な行為と言える。更に言えば、クライエントが契約の主体であって、その局面に参加する事を意味している。ソーシャルワークの実践が、ソーシャルワーカーによる一方的な活動ではなく、あくまでもワーカーとクライエントがパートナーシップを持って取り組む協働作業であり、クライエントの主体的な参加を促していく事が求められる。
