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システム理論(まとめ)

受験に役立つ勉強

システム理論とは、一言でいうと「人と環境との交互作用に関する理論」です。

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竹のっこん
竹のっこん

システム理論は奥が深いよ。一度に全体を把握するより、過去問のキーワードから遡って学習してね。

システム理論とは?

システム理論とは、個人と環境を切り離さず、個人は常に周りの環境との関わりの中で交互作用を受けていて、その交互作用にも焦点を当てて介入するアプローチの考え方です。

歴史的な背景としては、1910年頃からケースワークはリッチモンドに始まるワーカー主導のアプローチが始まりでした。いわゆる、個人のパーソナリティーや傷病により困窮している、と言う医学モデル(治療モデル)の考え方です。そのため、個人のパーソナリティーや生い立ち、傷病などを深く深く原因追究し、その原因を少しずつ改善させる、長期援助技術として発展していきました。しかし、1930年頃には、ワーカー主導の治療的介入への批判が生まれ、援助される対象者を中心にした、機能主義アプローチが提唱されました。機能主義アプローチとは、ランクの意志心理学(意志療法)を基礎に「意志」の力で、自分で問題を解決できる力を有す、として治療よりも援助を重視したアプローチでした。その後、1960年頃からは、診断主義と機能主義の折衷アプローチである、問題解決アプローチや、多様なアプローチ方法が様々な研究者のもとで展開されました。また、ポストモダン期への潮流の流れと共に、伝統的な長期ケースワークの批判が少しずつ高まり、困窮を個人の責任と考えず、個人を取り巻く環境に問題がある、と言った新しい思想も生まれ、その考え方が1960年以降、新たなソーシャルワーク技術として展開して行きます。それが、システム理論の始まりです。その後、多くのソーシャルワーカーが新しい理論を提唱する様になり、ケースワーク、グループワーク、コミュニティーワークの3つが統合され、ジェネラリスト・ソーシャルワークにまで発展する視座を示す事になりました。

交互作用」とは?
システム理論とは、常に人と環境が互いに交互作用を与え合っていると考えますが、この「交互作用」について下記の図で説明します。左の図は一般的な「相互作用」のイメージです。環境と個人が一元的に関わっていると表現します。右の図は「交互作用」のイメージです。個人と環境が切り離される事なく、多角的に関係しています。

システム理論 《各理論による捉え方》

1)システムとしてのホメオスタシス機能とは

システム自体が恒常性を保とうとする機能を「ホメオスタシス」と言います。人体の機能におけるホメオスタシスは「生体の恒常性」とも言われ、汗を出して熱を下げる、体液内の電解質バランスを維持したりなど、ホルモンの機能や内分泌系の作用とされていますが、それと同じ機能として、システム自体が崩れそうになっても、恒常性を保とうとする動きを総称して「ホメオスタシス」と呼びます。

2)システム理論の始まりは「一般システム理論」から

システム理論は、1945年~1955年に、ベルタランフィ,L.の提唱した「一般システム理論」から発展したと言われています。この「一般システム理論」とは、システム自体を有機体と考え、外部と情報やエネルギーの交換を行っている解放システムとしてと捉えられました。

開放システム・・・システム自体が、他の様々な外的システムと相互関係をもち、環境の変化に応じてシステム自体に影響を及ぼすシステム。ほとんどのシステムががこちらのシステムと考えられる。
閉鎖システム・・・システム自体やその関係が一元的に限定され、他のシステムや要素との相互関係が排除されたシステム。

3)パーソンズの社会システム論と4つの下位システム

パーソンズは、社会を構成する多数の要素が相互に作用しあう事で、一つの社会として統合されると言う社会システム論を提唱しました。
また、社会システムは4つの機能分化した下位システム(AGIL図式)が社会の存続し、維持発展すると考えました。AGIL図式については、こんな理論があるんだ~で大丈夫。ここまで覚えられないので。


①適応(Adaption)
②目標達成(Goal-attainment)
③統合(Integration)
④潜在性(Latency)


竹のっこん
竹のっこん

パーソンズは、AGIL図式、主意主義的行為、などのキーワードがあるね。
パールマンは、4つの P (6つのP)、問題解決アプローチだよ。間違わないでね。

4)ピンカス,A.とミナハン,A.の4つの下位システム

ピンカス,A.とミナハン,A.は、システム理論において以下の4つのサブシステムを意識することの重要性を説いています。

クライエン・トシステム
問題や課題を抱えるクライエントとその家族など。援助やサービスを利用、もしくは必要としている個人、家族、集団、組織、地域等。
アクション・システム
目標達成のためにソーシャルワーカーと協力していく人々のことで、例えば専門職チームなど。変化を起こすため用いる人材(クライエント自身も含む)や資源提供、情報提供、エネルギー等。
ターゲット・システム
ソーシャルワーカーとクライエントの課題解決のためにターゲットとなる人々や組織・団体、地域社会、制度・政策。ワーカーが働きかけ、問題解決のために必要とされる変化を引き起こす対象となる人や組織等。
チェンジエージェント・システム(ワーカー・システム)
ワーカー自身とワーカーが所属する機関。クライエントの問題解決能力の向上や有益な変化引き起こそうとするワーカー等。

良く迷うのがアクションシステムとターゲットシステム
アクションシステムは「Ch」側で働くのに反して、ターゲットシステムは「Cli」側で影響を与える事。ややこしくなって、迷った時は、まずは「A」を疑い、それ以外は「T」と考える。

5)ゴールドシュタイン,H.のユニタリー・アプローチ

ゴールドシュタイン,H.は、システム理論を活用し、ユニタリー・アプローチ(一元的アプローチ)を提唱し、後に認知的‐人間性アプローチへと展開させた。

6)リソース・システム

リソース(資源)・システムとは、人が生きていく、目標を達成する、そして、生活課題に対応するにあたって生起する物質的、情緒的、精神的、精神的ニーズを満たす生物・心理・社会的、環境的資源の総体を指す。

7)サイバネティクス

サイバネティクスとは、情報の通信と制御の観点から、生物、機械、社会に共通するシステムを捉えた考えかたで、他からの干渉としての正負のフィードバックを基にシステムを変動させる。

8)エコシステム

エコシステムとは、生態学的視点システム論的視点をもち、個人は環境との交互作用を通して成長する存在であると捉える。

ブロンフェンブレンナー,U. 5つの生態学的システム理論

ブロンフェンブレンナー,U.(1917~2005)は、人間の成長(子どもの発達過程)を個人と環境との相互作用から捉える生態学的システム理論を提唱しました。人は環境に影響を与えると同時に、環境から影響を受けながら生活し、成長します。人が持つ関係性は何事も一方通行ではなく、自分もその周囲も、お互いに影響を及ぼし合っているという考え方を特に重要視した理論です。

ブロンフェンブレンナーは、人を取り巻く環境を、システム内やシステム間で互いに影響し合っている4+1つのシステムに分類しました。この4つのシステムは、ロシア人形のマトリョーシカの様な入れ子構造になっていると考えました。

また、その後には、時間の経過の中で、個人に影響を及ぼす出来事や環境変化が影響しているとするクロノシステムを提唱しました。

ブロンフェンブレンナーの生態学的システム理論は、現在も保育現場で継承されているシステムです。

1)マイクロ(ミクロ)システム ➡ 個人そのものや、家族、学校、地域、仲間など

2)メゾシステム ➡ マイクロシステムとエクソシステムの中間(メゾ=中間)。個人に影響するレベルのみでなく、それより広い範囲においても影響を及ぼすシステム。

3)エクソシステム ➡ 自分とは直接関係しないが、他の人を介して自分や周囲(マイクロ、メゾ)に影響を与える相互関係。両親の職場、兄弟の学校。

4)マクロシステム ➡ 国レベル、法律レベルなどの全てを包括する体系そのもの。

5)クロノシステム ➡ 時間という視点から、個人に影響を及ぼす出来事や環境変化の事。進学、就職、災害、歴史的出来る事など時間の流れの中で個人の周りで起こる特定の出来事やライフイベントの事。

第27回 問題99 事例:ソーシャルワークの介入レベル

事例を読んで、J相談員が介入したレベルとして、適切なものを1つ選びなさい。
[事例]大学で障害のある学生の修学支援を担当するJ相談員(社会福祉士)は、重度の身体障害のある学生Kさん(18歳、女性)の学内支援を調整している。
Kさんから多目的トイレ内に手すりを増設してほしいという希望が出された。
そこでJ相談員は、所属する部署の上司と相談し、Kさんが属する学部からの要請を依頼するとともに、関係部署と交渉した。
その結果、増設工事についての了承を得ることができた

1 ミクロレベル
2 メゾレベル
3 サブレベル
4 マクロレベル
5 エクソレベル

解説 介入レベル

ソーシャルワーカーの介入するレベルを問う問題。
J 相談員は、Kさんの所属する学部に働きかけています。ですので、個人的なミクロではないし、制度や法律などの大きなレベル(エクソやマクロ)でもない。サブとメゾが残りますが「サブ=補助」ですよね。文章からは、補助的な要素は確認できないので、メゾが正解になります。
単純に、ミクロ以上、エクソ未満から、2が正解、メゾシステムと判断できます。

第32回 問題106 事例:ソーシャルワークの介入レベル

事例を読んで、B社会福祉士が介入しようとしているシステムとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
[事例]P国から2年前に来日したCさんは、現在、難民認定を得て就労可能な在留資格を持って、Q市で暮らしている。
日本語能力は十分ではないが、R市にある会社に就職している。
しかし、自宅付近では孤独な暮らしで、近隣住民との会話ややりとりは全くない。
Cさんは、どうしたら近隣住民と交流を持てるのかと悩み、Q市社会福祉協議会のB社会福祉士に相談した。
B社会福祉士は、Cさんと同じような相談を複数回受けたことがあったため、実態把握の必要性を感じた。
このため、Q市に居住している外国籍住民を対象とした聞き取りを行い、その結果を町内会に報告し、対応を促すこととした
1 ミクロシステム
2 メゾシステム
3 クロノシステム
4 マクロシステム
5 エクソシステム

解説 介入レベル

Cさんを含むQ市に居住している外国籍住民を対象としており、マイクロ以上、エクソ未満となります。解答のカギは、まずミクロを疑って、それ以上であれば、次はマクロ?、エクソ?と介入レベル絞ると答えられます。2の、メゾシステムが正解。

第31回 問題100 ピンカスとミナハン

ピンカスらによる「4つの基本的なシステム」の中の、ターゲット・システムとチェンジ・エージェント・システムに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ターゲット・システムは、役割を遂行するソーシャルワーカーを指す。
2 ターゲット・システムは、ソーシャルワーカーが所属している機関を指す。
3 ターゲット・システムは、変革努力の目的達成のためにソーシャルワーカーが影響を及ぼす必要のある人々を指す。
4 チェンジ・エージェント・システムは、契約の下で、ソーシャルワーカーの努力によって利益を受ける人々を指す。
5 チェンジ・エージェント・システムは、目標達成のため、ソーシャルワーカーと協力していく人々を指す。

解説 ピンカスとミナハン

1,役割を遂行するワーカーは、Ch システム。
2,SWが所属する機関も、Ch システム。
3,○ 影響を及ぼす必要のある人々は、T システム。
4,利益を受ける人々は Cli システム。
5,SWと協力する人々は A システム。

第35回 問題97 ピンカスとミナハン

事例を読んで、ピンカス(Pincus, A.)とミナハン(Minahan, A.)の「4つの基本的なシステム」(チェンジ・エージェント・システム、クライエント・システム、ターゲット・システム、アクション・システム)のうち、チェンジ・エージェント・システムが抱える課題として、最も適切なものを1つ選びなさい。
【事例】
脊髄小脳変性症で入院したHさん(45歳、男性)が退院準備のために医療ソーシャルワーカーに相談に来た。現在、下肢の筋力低下が進んでおり、長い時間の歩行は困難で車いすを利用している。Hさんは一戸建ての自宅で妻(42歳、会社員)と二人暮らしであり、今後は、介護保険サービスを利用して自宅に退院することを検討している。また、Hさんは入院後休職中であるが、自宅で療養した後に復職を希望している。

1 Hさんの退院後の自宅における介護サービス
2 Hさんが復職した場合の職場での勤務時間
3 Hさん夫妻に対して、退院後に必要となる妻への支援
4 Hさんの希望に基づき、近隣の利用可能な社会資源
5 Hさんの今後の療養に関わる院内スタッフの情報共有

解説 ピンカスとミナハン

まず、Ch システムが誰なのか?を特定する必要があります。事例に「退院準備のために医療ソーシャルワーカーに相談に来た」とありますので、ここでいう Ch システムは「病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)」の事になります。
で、問題を解くカギですが、前後の文章に惑わされる内容ですが、病院のMSWしかできない仕事を探しし出せるか、です。

ここでの注意点は、想像を含ませ過ぎない事。あれも困る、これも困る。現場に出てる人ほど、色々と現実的な事を考えすぎて答えが選べません

1,退院後における介護サービスはケアマネージャーの役割。
2,職場の勤務形態は上司や会社の役割です。
3,退院後の妻への支援は、他の家族や親類などの役割。
4,近隣で利用できる社会資源は、地域、包括、市職員など。
5,○ 院内医療スタッフへの情報共有は、病院のMSWしか担当できません。

保育士試験 平成30年[前期]問1 ブロンフェンブレンナー

次の文は、発達に関する理論についての記述である。( A )~( D )の語句が正しいものを○、誤ったものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
ブロンフェンブレンナー(Bronfenbrenner, U.)は、生態学的システム論において、人が日常生活で直接・間接に関わりをもつ社会的文脈を、入れ子状の多層モデルとして示した。一人の子どもを中心とすると、第1層は、子どもと親の関係、子どもときょうだいとの関係、子どもと保育士との関係などがあげられ、(A マイクロシステム)と呼んでいる。第2層の(B エクソシステム)では、子どもが保育所に通っているならば家庭と保育所、子どもが小学校に通っているならば家庭と小学校との関係などを示している。第3層の(C メゾシステム)では、親の職業・職場、きょうだいの通う小学校などがあげられている。第4層は(D エクソシステム)と呼び、信念体系、価値観、法律、文化などの社会的文脈が第1層から第3層を取り囲んでいる。

解説 ブロンフェンブレンナー

第1層 マイクロシステム(子供と家族、子供と保育士)
第2層 メゾシステム(家庭と保育所、家庭と小学校など)
第3層 エクソシステム(親の職場、兄弟の小学校など)
第4層 マクロシステム(価値観、制度、文化、信念など)

正解 A マイクロシステム

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